クラシックギターの変則チューニングについて
最近今まで弾いていなかった変則チューニングの曲をさらってみています。ということでクラシックギターにおける変則チューニングについて少し考えてみたいと思います。
まず念の為ギターの基本的なチューニングを示すと以下のようになります。
①=E
②=B
③=G
④=D
⑤=A
⑥=E
現代のクラシックギターでよく用いられる変則チューニングは基本的には元の音より低い音に調弦されます。以下のようなパターンがよく用いられます。
1. ⑥=D
2. ⑥=D、⑤=G
3. ③=F#
3.の調弦にすると基本的に元のタブラチュアと同じ左運指で弾けるためルネサンス・リュートやビウエラの曲を弾くときに用いられます。1.や2.のチューニングはオリジナル・編曲を問わず多くの曲で用いられており最早変則チューニングとはいえないのかもしれません。
19世紀のギター音楽では現代では見られないようなパターンの変則チューニングも用いられていたようです。例えばフェルナンド・ソルは上記1.や2.のパターンの他に⑥=Fと元より音程を高く合わせるチューニングも用いていました。他にはカルカッシやフェランティといった人の曲にオープンEというか開放弦で鳴らすとEのコードになるようにチューニングするという指定のある曲があります。これは③=G#、④=E、⑤=Bとするもので3本の弦をレギュラーチューニングより高く合わせるというものですが現代ではクラシックギターではほぼ用いられていないようです。
余談ですがギター以外の弦楽器に目を向けると17世紀のオーストリアではヴァイオリンを変則チューニングにするということが行われていたようです。例えばハインリヒ・イグナツ・フランツ・フォン・ビーバー (1644-1704)の「ロザリオのソナタ」という曲集では様々な変則チューニングが用いられています。
現代では幾つかのパターンが定番化した他はあまり用いられることが少なかった変則チューニングですが、ギタリスト・作曲家のローラン・ディアンスは作曲編曲の両方でかなり様々な変則チューニングを用いています。主に⑥弦と⑤弦のチューニングを変えるのですが、思いつくままにディアンスの用いた変則チューニングの例を挙げると以下のようになります。
⑤=B
⑥=D、⑤=B
⑥=F#、⑤=B
⑥=E♭
⑥=A(⑤弦の1オクターブ下のA)
この他のパターンももう少しありますが、積極的に変則チューニングを用いていて元の音より高い音程にチューニングすることも多いです。またディアンス以外でもヨークの「サンバースト」やドメニコーニの「コユンババ」のように現在よく知られたクラシックギター曲で変則チューニングが用いられている曲もありますね。
個人的には低音を元より高い音に合わせることにやや抵抗感があったためこの手のチューニングが求められる曲はあまり弾いていなかったのですが、ふとした事で⑤弦をBに上げる曲を弾いてみた所、弦の張力が高くなることにあまり抵抗を感じなかったので考えを改めることにしました。今のところディアンスの⑤=B、⑥=E♭、といった辺りの曲をさらっていますが今後は他のチューニングの曲も弾いてみたいと思っているところです。
クラシックギターのような楽器はチューニングが変わる事自体でレギュラーチューニングの時とは違う雰囲気を生み出すことができますし可能性も広がるので愛好家の皆さんにもおすすめしたいと思います。
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