本日(9/30)のコンサートについて
本日の「クラシックギターコンサートを楽しむ会」ですが台風24号の影響で現時点で第二部は行わないことが決まりました。直前の告知で申し訳ありません。どうぞよろしくお願いいたします。
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本日の「クラシックギターコンサートを楽しむ会」ですが台風24号の影響で現時点で第二部は行わないことが決まりました。直前の告知で申し訳ありません。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、19世紀初頭にはヨーロッパ各地で人気のあったギターですが、音楽史でいうところのロマン派の時代になると急速にブームも去り、衰退期に入ります。しかし、そのような時期にも数は少ないながらヨーロッパ各地にギター愛好家は存在し優れたギタリスト・作曲家も存在しました。その内の何人かの名前を上げてみます。
ナポレオン・コスト(1805-1883)は、フランス人のギタリスト・作曲家ですが、パリでフェルナンド・ソルと知り合い大きな影響を受けています。ギター独奏曲を中心にギター二重奏曲、オーボエとギターの二重奏曲などの作品を残しています。主に低音側に弦を一本追加した7弦ギターを弾いており、作品の多くが7弦ギター用の曲として作曲されています。
ヨハン(ヨゼフ)・カスパル・メルツ(1806-1856)はブラティスラヴァで生まれ主にウィーンで活動したギタリスト・作曲家です。彼も多数のギター曲を作曲・出版しましたが、オリジナル作品の他、当時の音楽会で流行した有名なオペラからの名旋律を編曲したオペラ幻想曲も多数作曲しています。メルツは主に10弦のギターを使っていましたが、生前出版された曲の多くは通常の6弦のギター用の曲になっています。
彼らより少し下の世代になりますが、ジュリオ・レゴンディ(1822-1872)はギターの天才少年として幼少期から演奏活動を行い、フェルナンド・ソルから曲を献呈されている程です。後年はギターだけでなくコンセルティーナというアコーディオンのような楽器の演奏を行うようになったということもあってか、残されたギター曲は少なく、op.19〜23までの5曲、1980年代終わり頃にロシアで手稿譜の形で発見された10曲の練習曲、21世紀に入ってから筆写譜の形で発見された3曲、で全てのようですが、どれも技術的には難しいですが優れた曲です。彼は8弦のギターを使用していましたが出版されたギター曲は通常の6弦ギターのための曲になっています。
このように、ロマン派時代のギタリストの傾向として低音側に弦を追加した多弦ギターを使うというものがあり、開放弦で使える低音の数を増やすことでロマン派の音楽に対応しようとしたことが伺われますが、ピアノやオーケストラなど、より音量の大きな音楽が好まれる流れの中で時代に取り残される形になってしまったことは否めず、それが衰退の大きな原因と考えられます。
一方、スペインではこの時代にも多数のギタリスト・作曲家が活動しており、例えばフリアン・アルカス(1832-1882)のようにヨーロッパ的な作品だけでなくスペインの民族音楽のスタイルを取り入れた作品を多数作った人などもいました。そしてそのような流れが後の近代スペインのギター音楽に繋がっていくのですがそれは記事を改めます。
昨日空き時間に録音してみました。
6単弦のギターが出来たのが大体18世紀終わり頃と考えられますが、19世紀に入るとヨーロッパ各地でギターのブームが起こります。パリやウィーン、ロンドンなどヨーロッパの主要な都市で多くのギタリスト兼作曲家が活躍し、家庭音楽向けのギター曲やギターを含む室内楽曲が多数出版されました。この時代の代表的ギタリスト・作曲家としてはフェルディナンド・カルッリ(1770-1841)、ヴェンツェスラウス・トマス・マティーカ(1773-1830)、アントワーヌ・ド・ロイエ(1768-1852)、フランチェスコ・モリーノ(1775-1847)、アントン・ディアベッリ(1781-1858)、ディニシオ・アグアド(1784-1849)、フランソワ・ド・フォッサ (1775-1849)、ルイジ・レニャーニ(1790-1877)、マテオ・カルカッシ(1792-1853)など多数の名を挙げることができます。その他、ヴァイオリンの大ヴィルトゥオーゾとして有名なニコロ・パガニーニ(1782-1840)もギターを演奏しヴァイオリンとギターのための二重奏曲他のギターを含む室内楽を多数作曲していますし、「魔弾の射手」などの歌劇で知られるカール・マリア・フォン・ウェーバー(1786-1826)なども少数ながらギターを含む室内楽曲を作曲しています。この中でも特にこの時代を代表するギタリスト・作曲家としてマウロ・ジュリアーニ(1781-1829)とフェルナンド・ソル(1778-1839)の名を挙げたいと思います。
ジュリアーニはイタリア人ですが19世紀初頭にウィーンに移り主にウィーンで活躍したギタリスト・作曲家です。ギターのヴィルトゥオーゾとして演奏活動をした他、多数のギター曲を作曲・出版しています。ギター独奏曲としては易しい練習曲や小品、ソナタやロンドのような曲、それと何よりも当時の有名な旋律を主題にした多数の変奏曲、ポプリという当時流行した歌などのメドレー集のような曲など様々なタイプの曲を残しています。ポプリの形式の曲で有名なのはロッシーニのオペラのアリア等を用いた「ロッシニアーナ」という曲で現在でもジュリアーニの代表作として多くのギタリストに演奏されています。ギター独奏曲以外ではギター二重奏曲などの他、フルートやヴァイオリン、ピアノなどとの二重奏曲、弦楽四重奏とギターなどのような様々な編成のギター入り室内楽曲、ギターと管弦楽のための協奏曲まで多様な編成の曲を残しており、この時代を代表するヴィルトゥオーゾと呼ばれるに相応しい存在といえると思います。
スペインのバルセロナ出身のソルはモンセラート修道院で音楽教育を受け、オペラやバレエ音楽なども作曲しており単なるギタリスト作曲家の枠を超えた作曲家といってよい人だと思われます。ギター曲に関しては作品番号の付けられた曲はギターの独奏曲かギター二重奏曲に限られており、その他ギター伴奏の「セギディーリャ」という歌曲などを残していますが当時の他のギタリスト作曲家のようなギターを含む室内楽曲は殆ど残っていません。現代ではソルのギター曲はギターの古典期を代表する作品群として高く評価されており、現代でも多くの作品がギタリストによって演奏されています。
19世紀初頭に人気を集めたギターですが、ピアノが家庭に普及したことやコンサートホールでの演奏会が盛んになっていったことなどの時代の変化により恐らくは1830年頃から急速に衰退していくことになります。その衰退期のヨーロッパ各地でのギター音楽の状況は次の記事で触れたいと思います。
※9/17 ジュリアーニとソルについての箇所を追記しました。
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